【短編】鐘の音が聞こえる
「ねぇ、ケン」



「ん?」



「その『彼女』とは、どういう関係なの?」



私は好奇心いっぱいに訊ねる。



「どういう関係って… だから、彼女だよ。」



「ふーん… じゃぁ、なんて名前?」




「…偶然にも、奈緒と同じ、『ナオ』」



「へぇ〜…」



「ナオは約束を破ったりしないんだ。だから、きっと来る…」



「ずいぶん信頼してるのね」



私はケンの頭を撫でた。



「当ったり前だろ。」



ケンは自慢気に頷いた。



「ねぇ、頭すごく冷たいよ? 帽子、貸したげる。」



私は被っていたニット帽を、ケンに被せてあげた。



「…ありがとう。すごく暖かい…」



ケンの目が優しくなった。



健気な少年、ケン…



こんな寒空の下、「彼女」を待ち続けるケン



駅前にいるため、街の明かりは明るかった。



仕事から帰る男性の群れに、ナオちゃんを見つけるのはきっと容易いこと。



それなのに、ケンの待っているナオちゃんらしい女の子は、いくら待っても現れなかった。






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