巡愛。~ずっと好きだった~
「あ…いや、覚えていないみたいだ。」
パッと健ちゃんが、元の健ちゃんの顔に戻る。
「そうなんだ…残念だね。」
私はホッとしていた。
だって“覚えてる”んなら…私ではない事になる。
「…いや、覚えてなくて良い。前世の俺は…彼女に酷い事をした。酷く嫌われていたからな…。」
そう言う健ちゃんは、すごく申し訳なさそうな顔をしていた。
前世であって…健ちゃんがした訳じゃないのに。
「じゃあ…失礼する。また、体育祭で…。」
「あ、うん!またね!」
慌てて帰る健ちゃんの背中が…何だか寂しそうに見えて。
「健ちゃん…!体育祭の日、お弁当作って行っても良い?」