巡愛。~ずっと好きだった~
正室がいて、側室がいる。
それが普通なのだ。
それでも、彼女達の心を考えずにはいられない。
皆、辛いのを我慢するしか、ないんだ。
…だからであろうか、私が女子として生きるのが嫌なのは。
このような想いを、したくはない…。
今宵も源氏物語を読み耽り、彼女達の心情に心打たれ、涙していた時だった。
「…美しい、な。」
自分しかいないはずの部屋の中から急に声がした。
男の声だ。
瞬間的に刀を手に持ち、声のした方を見る。
部屋の片隅に、一人の男が立っていた。