巡愛。~ずっと好きだった~


男はニヤリと笑った。



「そう、怒るな。…疾きこと風の如く、徐かなること林の如し。危険をおかしてお前に会いに来たというのに。」



その言葉には…聞き覚えがあった。



「風林火山…お前、晴信…か!?」



「いかにも。長尾景虎…会いたかったぜ。」



我が宿敵、武田晴信が何故!?



「一人なのか!?」



全身に緊張が走る。


先日の川中島の戦では、惜しくも決着がつかず…引き分けとなった。


私は晴信と直接、刀を交える事も叶わなかった。


その宿敵が…今、目の前に、いる。



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