EACH WOUND
え、俺のせい?
いやいや、それはなくない?
だって"ありがとう"って言ってたし。
じゃあ何で?
彼女の細い指が頬に伝う涙を拭う。
「見なかったことにして。」
彼女は声が震えているのを隠すように少し強い口調で言い切る。
やっぱり俺の方へは顔を向けずに。
「うん。」
その一言しか言えなかった。
何て言ったらいいかわからないし、余計なことを言ってしまいそうだったから。
あの時みたいに。
あれ。
俺、まだあの時のこと引きずってんのかよ。
ださすぎ。