EACH WOUND
少し歩くと、豪邸が見えてきた。
私の家だ。
本当に悪趣味だと思う。
友達はうらやましがるけど、私にはこの家が大きな檻にしか見えない。
門を通過して玄関まで何メートルあると思う?
20メートルだよ、20メートル。
疲れて帰ってきて死にそうだってのに。
「ただいま。」
「おかえり、麻里。」
靴を脱いで顔を上げると、階段の上からお兄ちゃんが微笑んでいた。
お兄ちゃんじゃなくてお義兄ちゃんだけど。