EACH WOUND

「なんか、ごめんなさい。」



何が?



「何で謝るの?」



隣にいる彼女に顔を向けると彼女もこっちに顔を向けていて。
こんなに近くでまっすぐに長い間目が合ったのは、これが初めてな気がした。
少し鼓動が速くなった俺に対して彼女の瞳は……



悲しいような、怯えているような、はたまたそうでもないような。
そんな色を映し出す彼女の瞳は少し淀んでいる気がした。


作り自体は綺麗なんだけど。



「もう帰る。」



俺の問いには答えずに、鞄を持ちベンチから立ち上がる。


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