キミの隣に
水飲み場の水栓をひねり、
小さなバケツに、
きもち水をはって、
鷹尾君の隣にすわる。

ライターで、
こよりみたいに細い花火に
火をつけた。

地味だよねぇ・・・
線香花火って。

場所とらなくって
いいけどさ。


「鷹尾君も、やる?」

何だか、口を開きかけては、
言葉を飲む彼にも勧める。

さっさと済ませて
帰りたかった。

花火をやりながら・・・
なんて言い出した手前、
終わんないのに帰れない。

少ないパックを選んで
よかった。

「うん。線香花火好きなの?」

火種に近づけて、
点火を待ちながら彼はいう。

「別に。ネズミ花火とか
悪さできるモノの方が好きよ。
この時間にやっちゃ、
近所迷惑だから、
コレにしただけだよ。」


「真月らしいな。」

言って彼は笑う。


「で、話って何?」

さすがに疲れた表情の
樹里を見て、
何も今日じゃなくて
いいんじゃないの?って、
いいそうになる。


黙ったままの樹里が
意を決したように口を開いた。


「真月、さっき、言ったこと
冗談だと思ってる?」


さっき、って・・・

 
 
< 112 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop