ふたご王子に恋をした
「…ん、コレやる。」


そう言って陽はポケットから何かを取り出すとあたしの方に突き出した。


「…なに?ゴミならいらないけど。」



「アホ。のど飴だよ。そんなにバカみたいに叫んでたらのどがやられんだろ。」


「バカは余計!」



「…やるからこっち来い。」




優しいじゃん……でも、渡してはくんないのね。



「やるから来いって…犬じゃないんだか………わっ!!」



暗闇の中でうっすらと見える陽の手を取ろうと近寄った瞬間、腕を引っ張られた。



気付くとあたしの背中に腕が回っている。



そう、



陽に抱き締められていた。



急な展開に頭がついていかない…んだけど…


ど、どういうこと…!?



あたしの顔は陽の胸のあたりにあって鼓動が聞こえる。


あたしより脈が早い…みたい。



「…急に…ワリィ。」


「う……うん…。」



そう言うものの、抱き締める力は緩まない。


「……もう少しだけ、このままでいたい。」



聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声がなぜか妙に胸に響く。



自然とあたしの心臓まで脈が早くなっていた。


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