ふたご王子に恋をした
「………麻衣?」


「……え……あれ?」



あたしの頬を涙が一筋つたった。



「…ご、ごめん!トイレ借ります!」



うつむいたまま慌ててトイレに駆け込む。



泣くとか…


かっこわる。


だけど…


同情かもしれない、


あたしじゃなくて本当はまだ真美さんを引きずっていただけなのかもしれない、



そう思ったら急に悲しくなった。


あたしは陽にとってどんな存在だったんだろうな…



はぁ…泣いたってしょうがない…よね…



人さまのトイレットペーパーをちょっぴりもらって涙を拭く。


化粧落ちてないといいけど…



そう思いながらドアノブに手をかけた瞬間、玄関のドアが開く音が聞こえた。



…………え?


もしや…



陽!?



玄関で聞こえた足音はリビングへと向かった。


ドキドキとうるさい心臓をおさえ、耳をすませる。





「……あれ、ヒナ。バイトは?」



やっぱり陽だ…


どうしよう…


出るにも…

気まずくて出られない…


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