ふたご王子に恋をした
パフスリーブに丸襟の白いシャツ、ヒラヒラのレースがついたお姫さまみたいなスカート。

ピンクのギンガムチェックのエプロン。

これが制服。



どこぞやのメイドやねん。




これは薫ちゃんの趣味であたしの趣味ではない。それに、お菓子を作るのは薫ちゃんであたしは基本レジ担当だからこんなふざけた格好でも平気なのだ。


こわもてな薫ちゃんを見てお客さんが逃げないように、とびきりブリブリしたあたしを店先に置いてプラマイゼロにするって寸法らしい。


薫ちゃんの作戦のおかげか、店の売上はなかなか良くてこうしてあたしもクビにならずバイトとして働けている。



「いらっしゃいませー☆」



営業スマイルはプライスレス!!


「チョコレートケーキに、イチゴのミルフィーユですね♪かしこまりました。お会計は、750円になります。」



ショーケースからトングを使って崩れないように挟み、お皿に乗せる。


「ごゆっくりどうぞ☆」



あー…

お腹すいたなぁ…



お客さんが奥の席に行ったあと、あたしはしゃがんでケーキが並んだショーケースにへばりついた。


ぐきゅるるると新種の動物の鳴き声みたいな音がお腹から聞こえる。


「ちょっと麻衣ちゃん、はしたないわよ!」

< 9 / 389 >

この作品をシェア

pagetop