道のない甲子園
真新しい校門を抜け、静まりかえった廊下を歩く。
扉の前に立ち、深呼吸する。
「失礼します」
中に居た人が一斉にこちらを向く。
その内の1人が席を立ち、私…俺に近付いてくる。
「こんにちは!
君が明日から僕のクラスに通う
武内 海(タケウチ カイ)君かな?」
「はい。よろしくお願いします」
俺は眼鏡の担任らしき人物に挨拶した。
「よろしく。僕は担任の坂口健太(サカグチ ケンタ)。
早速教室に案内するよ」
俺は何も言わずについていった。
「ここが君のクラスだよ」
至って普通な教室だった。
「君…。武内の席は窓側の一番後ろ。
何か質問ないかな?」
「部活は…?」
「他の生徒はもう活動を始めているから、武内も見学とかしてなるべく早く決めて欲しい」
「野球部はあるんですか?」
…………
……………
いつまで待っても返事が来ないので、もう一度、今度ははっきりと言った。
「野球部に入りたいんですが…」