道のない甲子園
「この学校のエースの球を間近で見たいだけですよ」
これは本音だが、本当にはこいつの偉そうな態度が気に入らないだけ。
「…やってみろ、海。これも投手としてのテストの一貫にする」
「ちょっ、監督…。寺嶋の球を捕らせるのは危険です」
「裕太は次座る準備しておとけ」
「…はい」
「裕太さん、大丈夫ですよ。俺の球でも頭に当たらない限り、死にませんよ」
「怪我されても困るんだよ。体格が良くないから、ぶつかったら怪我しそうで…」
「真柴先輩。こぼしませんから…心配しないでください」
俺はそう叫んでから構えた。
「よし。寺嶋投げろ」
「お前なんかじゃ捕れねえよっ」
寺嶋の球はそこそこのスピードだった。
"バシッ"
速いと言えば速いけど…。
あの体格でこれくらい当然だね。
体格のおかげでちやほやされてきただけか。
俺はそのままボールを寺嶋に返した。