道のない甲子園
「好きに投げろ」
監督はミットを"バンッ"と叩いた。
「…気を付けてくださいよ」
俺は小さく呟いた。
"バシッ"
俺のボールは監督の手の中に、大きな音と共に収まった。
それは緩い球で返ってきた。
監督はもう一度ミットを叩いた。
きっと捕れないだろうと思いながら、久しぶりに本気のスライダーを投げた。
もちろん真柴先輩にも投げていない。
"シュッ"
球種も教えていないのに対応できるはずがない。
"バシッ"
聴けないと思っていた音が耳に飛び込んできた…!!