道のない甲子園
グランドの整備が終わるくらいに、バッティング練習に移った。
室内練習場からは暗くてよく見えないが、少しずつ白い影が減っている気がした。
「…あまり無理するなよ」
扉の開く音の後、監督の凛とした声が練習場に響いた。
「明後日の紅白戦の事だが…。
ここ数日で裕太は劇的に伸びてきている。
まだまだだが、試合でどの程度使えるか観るために、俺じゃなく裕太にお前の球を受けさせる」
「はい。わかりました」
「土曜は1点も取られるな。
日曜は他校との練習試合を組んである。
その試合は守備練習のために相手に打たせろ。三振させるな。
だが、点はやるな。以上だ。
質問はないか…?」
言ってることが無茶苦茶な気が…。