いちばんの星


「ミュリエル…」



ラナは何も言わずずっとミュリエルの背中をさすっていた。



「あの人は、最低だわ…ヒック…使用人を、女をただの道具としてしか見ていない…」



自分を捕らえる緑色の瞳。



その瞳には温かさや愛情という感情が微塵も感じられないほど冷たかった。



ポロポロと大粒の涙を流しながらそう言うミュリエル。



「だけど…国王様を叩いてしまったッ。私何て事を…」



そこまで言うとミュリエルはわぁっと声をあげ泣き出した。



どんな理由があろうと国王に手をあげれば死罪は免れないだろう…



ラナはミュリエルを思うと胸が締め付けられるようだった。



ミュリエルの脳裏にはヴェルヌの顔が焼き付いて離れない。



あなたは最低だとミュリエルに言われた時のヴェルヌの顔――。



怒りを露わにしたと言うよりはどこか少し、悲しげだった…



しかし今のミュリエルにはそんな事を考える余裕はなかった。



少しずつ空が白んできて、鳥の鳴き声が朝の訪れを告げる。



――運命の朝が、やってきた…



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