いちばんの星
動き出す影
それから毎晩、ミュリエルはヴェルヌの部屋へ呼ばれた。
部屋ではこれといって何をするわけでもなく、ヴェルヌのお酌をしたり何気ない話をしたりして過ごしていた。
最初の日以来、ヴェルヌがミュリエルに手を出そうとする事はなかった。しかし、たまにヴェルヌが近くへ来ると自然に体がビクリと反応してしまっていた。
そんなミュリエルにヴェルヌは初め「いちいち純情ぶらなくてもいい」と呆れたように言っていたが、次第に本当にミュリエルが怯えているのではないかと思い少し距離をとるようになった。
夜が更けると必ず部屋へ帰して一緒に寝る事もなかった。
――なぜかはわからない、ただ…ミュリエルを怖がらせたくないと、純粋にそう思ったのだ。
ただ本当に友人のようにふたりきりで過ごすだけだったが、ミュリエルはだんだんその時間が楽しくなり、いろいろ話をするようになった。
ミュリエルはリヴィアの事も聞いた。
彼女は街一番の踊り子で、その噂を聞いてヴェルヌが城へ呼んだらしい。
てっきり婚約者か何かと思っていたミュリエルは少しホッとしている自分にその時はまだ気づかなかった。
ただ…、もっともっとヴェルヌが知りたいと、そう思うようになっていた。