いちばんの星
ヴェルヌもまた無意識のうちにミュリエルと過ごす空間を居心地がいいと感じていた。
大臣のザランに、そろそろリヴィアや他の使用人を呼んではと言われたがヴェルヌは断り続けていた。
――なぜこんな気持ちになるのか…
ふとそんな事を考えていると、無意識のうちにヴェルヌの指がミュリエルの髪に触れていた。
はっと我に返りミュリエルを見るとポっと頬を赤らめて驚いたような、怯えたような表情でヴェルヌを見ていた。
「悪い…少し酔ったみたいだ」
そう言うとヴェルヌは立ち上がり窓の側へと歩いた。
ヴェルヌが離れた後もミュリエルの心臓は高鳴っていた。
(なんだろう…これ…)
そんな事を考えていると後ろからふいに声をかけられた。
「お前、名は?」
本当に突然だった。まさか名前を聞かれるなんて……
「ミュリエル、と申します」
「そうか…」
それだけ言うとヴェルヌは再び窓の外に目を向けた。
ただ名前を聞かれただけなのに、
『嬉しい』という感情が、ミュリエルの心をいっぱいに満たしていた。