いちばんの星
中庭は思った以上に暗く、スティークは以前ラナが転びそうになっていたのを思い出しフッと微笑んだ。
しかしすぐ我に返り、視界に飛び込んできた食糧庫を見つめた。
長い間城で働いているスティークも、食糧庫へ来るのは初めてだ。
――いったいここに何があるのか…
スティークが目を凝らしてドアの方を見ていると、視界の端にチラッと人影のようなものが映った気がした。
(何だ…?)
腰に携えた剣に手を掛けると、気配を消しゆっくりとその影に近づいて行く…
「え…」
スティークが見つけたのは、スヤスヤと眠る美しい女性の姿だった。
毛布にくるまって眠るその女性は、真っ暗闇の中でも光が当たったように美しく輝いていた。
はっとしたスティークは急いで彼女を揺り起こした。
「おい、大丈夫か?おい…」
スティークの呼びかけにミュリエルはゆっくりとその瞼を開けた。
「ん…あなた…は?」
いきなり起こされて初めはぼんやりしていたミュリエルだが、次第に意識がはっきりとしてきたのか、みるみる頬が赤く染まる。