いちばんの星
動き出した恋
――――――
「じゃあ行ってくるね、ラナ」
そう言って笑顔を見せるミュリエル。
表面上はわからないがその服の下には無数の痣があった。
「ええ。今夜もスティーク様と行くわね」
「うん…」
スティークに抱きしめられて以来、ミュリエルはスティークと顔を合わせるのが恥ずかしかった。
誰にでも優しいスティークが自分を抱きしめた事にさほど深い意味はないとわかっているものの、生まれて初めて男性に抱きしめられたのだ。
それも――ごく自然に…。
前までは考えられなかった、まさか……男性に抱きしめられる日がくるなんて。
しかし、これも長い間ヴェルヌと過ごしたお陰かもしれない、ミュリエルはそう思った。
いつものように扉の前で声を掛けて中へ入ったミュリエルは、ヴェルヌの様子がいつもと違う事に気づく。
いつもはソファーに座り、ミュリエルが入ってくるといつもの意地悪な笑顔を向ける。
しかし、今日は窓辺に立ち、じっと外を見たまま動かない。
「国王様?」
不思議に思いミュリエルが近づこうとすると思いもしなかった事を言われた。
「もう…こなくていい」
「え…」
「いい加減お前にも飽きた…帰れ」
今…何て?
何が起こっているかわからなかった。
どうして急に…だってあんなに…
ミュリエルの瞳からはポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「…ちッ」