いちばんの星
ヴェルヌなりにミュリエルの事を思っての行動だろう。
――たぶんヴェルヌもミュリエルの事を…。
しかし今のスティークにはヴェルヌの複雑な思いをラナに伝える事はできなかった。
そして、スティークはそっとラナの身体を抱きしめた…
震えるその身体を、精一杯優しく抱きしめる。
「泣かないで…」
今のスティークには他にどうしたらいいのかわからなかった。
ただ――君にそんなに涙を流してほしくない…
――ヴェルヌ、ミュリエル、スティーク、ラナ。
それぞれの思いが…そして涙が…
美しい月夜に溶けていく。
それぞれが相手を思い、そのために複雑に絡み合ってしまった想い…
夜空に美しく輝く月だけが、これからの未来を、知っているようだった――…