奉公〜咆哮1番外編〜
「栗原さんは若くていい男だが、隣のケンが有る雌牛は何だ?」

「う、牛ですってっ?」

 今にも【前】(ゼン・全破壊)を放ちそうになっている里美の肩を抱きかかえ、まぁまぁと宥めながら俺達の作戦と役割を説明した。

「……最新兵器ですか。なるほど心強いです、さすが日本は科学の最先端を行く国だ。
 それと王子の邪魔にならないように、遠方からの監視も併せてして下さる訳ですね?」

『(仮称)通じる君』を使っていても、窓口は玉ねぎ一号のようだ。一号は他の玉ねぎ部隊達より少し背が高いので見分けが付く。

 栗原と里美は、ジャケットの中にホルスターを忍ばせ、北田が新たに持ってきたダミー銃を携行している。

「こちらがその銃型兵器です」

 栗原はジャケットの前を開け、従者にそれを見せている。

「危ないですから触らないで下さいネ?」

 ダミー銃を手に取ろうと近付くロタリパ王子を制して栗原は言った。

「そうか、悪かった。しかし牛から言われても余は聞く耳は持たないからな? 進言だったら栗原さんか坂本さんで頼む」

 ぬぉぉお……パチパチッ……ぉおお。

 完全に【前】(ゼン)の体勢に入った里美を落ち着かせるのは容易ではなかった。


───────


 しかしこのままでは任務に支障を来たし兼ねない。仕方なく配置換えを余儀なくされた俺は、泣く泣く遠方監視役を里美に命じた。

「あんな小生意気なガキと一緒に居たら、その内東京は壊滅するわね、あたしの放った【前】で」

 強ちそれも大袈裟では無いかも……と考えてしまう程、里美の鼻息は荒かった。

「だから役割を交代したじゃないか。でもお前の役は重要だからしっかり頼むぞ?」

「任せておいてよ。あたしがやるからには完璧にこなしますから!」

 大した自信だ。


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