奉公〜咆哮1番外編〜
「お! これは珍しいガシャポンだ」

 真っ先にガシャポンコーナーに駆け上がった王子は、フロアーの4分の1を締めているそれの中から珍しいものをピックアップしていく。

「おい一号、百円玉が足りないぞ! 全部両替して来い」

 王子はエッシャーのキャラクターである『でんぐりでんぐり』を出す迄諦め切れないようだ。

「お前らもやるか?」

 物欲しそうに器械を覗いている従者達に、王子はくずして来た小銭を分け与えた。玉ねぎ部隊の一番人気は、投げて壁にくっ付けたりして遊ぶ、粘着性の高いウンチのマスコットだった。

「金のウンチ欲しいよなぁ!」

「僕は黒いウンチがいい!」

「私はトイレ型のウンチケースが欲しいよ!」

 お前ら、なんでウンチがそんなにいいんだ?

暫らくしてお目当てのガシャポンをやっとゲットした王子は、パーティーグッズのコーナーへ急いだ。

「王子! 警備の都合もありますので、どうかごゆるりと!」

 『(仮称)通じる君』を引っ張り回している栗原は、王子に着いて行くのがやっとで周りに気を配る余裕が無いようだ。その時里美が囁いた。

「ねぇ、淳。こういうの好きなんじゃない?」

 ツンツン引っ張っている袋は全身網タイツだった。

 う……、それマジやばい。こんな時にそんな想像させるなっての!

王子は目的の変装セットをしこたま買い込んで、従者にそれを預けた。

「フェデッ○スで王宮に送っておいてくれ」

「御意」

「坂本さん達は何か欲しい物は無いか?
 我が国のGDPは世界でも上位に入っているんだ。金なら幾らでも有るぞ?」

 そうは言われてもパーティーグッズ売り場ではたかが知れている。しかし栗原はズに乗って言った。

「欲しい車は有るんですけどねぇ」

「なんていう車だ?」

「ハマ○H2ってのがいいんですよぉ」

「おいおい! 一千万近い車じゃないかっ! バカ言うなよ栗原っ!」

「坂本さん、冗談ですよ。いくらロタリパ王子でも無理ですって!」

 俺達はこそこそと囁き合った。

「そうかそうか。じゃ、見に行こう」

「えっ……ええっ?」


< 19 / 36 >

この作品をシェア

pagetop