奉公〜咆哮1番外編〜
 俺達は慌てて王子と合流し、一緒にラマネリ大使館へと向かう。今日の予定は一先ず終了だそうだ。

「ここ、ラマネリの大使館だったんすね」

 見事な白壁に囲まれた、純和風の豪邸。そこが大使館として使われている。

「前に見た事有りますよ。随分立派な日本家屋だと思ってたんですが、まさか……」

「栗原さん。余の父は大の日本贔屓でな、この家もどこぞの庄屋から買い受けて移築したんだそうだ。
 今日本のメーカーに頼んで床壁冷暖房を開発して貰っている所だ」

 床暖房だけでなく壁も、しかも冷房迄? 随分金の掛かりそうな話だが、ラマネリにとっては微々たる物なのだろう。

「でも凄くいいお庭だこと」

 門から入り、母屋に続く手入れの行き届いた小高い丘を越え、大きな鯉が泳ぐ広大な池(湖?)を眺めながら里美が言う。

「牛にも解るか? 母屋の庭の枯れ山水はもっと見事だぞ?」

 王子駄目ダメ! こいつは焼き物の価値も解らないんだから。

しかし牛と言われても過剰反応しなくなっている。

……さてはさっきの甘言が効いてるんだな?

「おーい! ロタリパ!」

「ヌシャーラ! もう帰って来てたのか」

 今日一日、何かにつけて気になっていた彼がそこに居た。とは言っても俺は断じてソッチの気は無いので宜しく(誰に)

「ああ、今日はエキサイティングな一日だった。下部喜町って知ってるか?」

「勿論。日本の歓楽街の代表選手じゃないか。しかし女に興味の無いお前がどうしてそんな所に!」

 ヌシャーラ、こいつもか! 確かに女性的な美しさは有るが、どうしてこんなにソッチの趣味の人間ばかりなんだ!

「類は友を呼ぶ」と言うが、熊ちゃん(北田)が呼んでるのか?

「ふふ……さすがのお前も知らないのか。三丁目は凄いぞ?」

 こそこそと王子に耳打ちする美少年ヌシャーラ。王子は相槌を打ちながら「余はお前と違ってハゲオヤジには興味が無い」だの「それは誠か? むうう、明日は下部喜町巡りと行くか」だの言っている。


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