奉公〜咆哮1番外編〜
「辰! 午! 戌! 酉!」

  タタタタッ ザザザァッ

「私は衛兵隊長の寅だネ。5人でここ守ってる」

 どこからともなく現れた彼等忍たま達は、十二支からコードネームを採っているようだ。

「その忍術は何処で習ったんですか?」

「そんな国家機密、教えたらいけないんだね」

 後ろの忍たま達は「あんず、あんず」と囁いている。

「こら! ゥント デル フンガッ! タント デテル クッソー!」

 忍たま「寅」は慌ててラマネリ語で制止した。

「あんず? 舘野さん? まさか!」

「なに! あんず知ってるのか?」

 寅も余りの事に機密保持の事等すっかり忘れている。

筆者の強引な設定に、キャラクター達も辟易しているのか、めいめい喋り始めた。

「都合良過ぎっスよね」

「緊張して損したわね」

「あんず、あんず、あんず」

「カム ナダイジ ナト コロ!」

 みんな好き放題である。

「でも貴男、忍術使えるんだネ。驚いた」

 3倍速で走ったのを見られたら隠しても仕方ない。舘野さんが師匠ならば伊賀流忍法を修行している筈だ。流派の違いという事で納得させよう。

「我々は甲賀流忍者です。
 元々伝令役の家系だったので走破術には長けているんですよ」

「そうか。私達より足が速いからショックだったんだね」

 寅の物言いがおかしいのは、まだ日本語を使いこなせていないのに加えて、舘野さんの口癖そのままに日本語を覚えてしまったからだ。

「伊賀には下、中、上忍の位が有りますが、舘野さんの百地は上忍のお家柄です。
 あなた方の忍術も従って上忍級という事ですね。我々は走るしか能が無いので羨ましい」

「羨ましいかそうか。忍法で解らない事が有ったらこの寅に聞くんだねっ!」

 得意げに胸を叩き、素早く踵を返してまた身を潜めた忍たま達だった。

「あいつら単純だな。少しおだてたら、いとも容易く引き下がったよ」

「あんなのに警備を任せてて平気なのかしら、ここ」


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