奉公〜咆哮1番外編〜
 そんな俺達の心配をよそに、着替えを終えた王子が姿を現して言った。

「待たせたな、諸君。さぁ行こう。わくわくするなぁ」

 王子は遅めの昼食を終え、来日当日に着ていた肩章付きで堅苦しい礼装用の軍服ではなく、ニット帽につり目気味のサングラス。だらしなく腰迄下げた短パンと長めのTシャツにナイキのスニーカー。

首から下げた太いシルバーのチェーンと認識票に、ごついリングやリストバンドというラッパー風ファッションでの登場だ。

「いい男が沢山待っている町に行くんだから少しはお洒落をしないとな」

 オシャレ? どうみても洋服に着られているようだが……。となるとやはり下部喜町に行くのか、それも三丁目に……やれやれ。


∴◇∴◇∴◇∴


 道案内の為に今日はヌシャーラも同行することになった。

彼はキラキラとした髪に緩めのカールをかけ、一見女性とみまごうばかりの出で立ちだが、着ているジャケットの襟ぐりは古臭いデザインだ。

下もパンタロンに厚底ブーツと、些か時代遅れな感は有る。

一号を除いた玉ねぎ部隊と里美はバスで、俺と王子、玉ねぎ一号と栗原とヌシャーラはロール○ロイスのストレッチリムジンで下部喜町に着いた。

 里美怒ってるだろうなぁ。

俺は王子と一緒にならないよう、わざと靴ひもを結び直したりして時間を稼ぎ、最悪の事態を憂慮しながら車を降りる。

リムジンが豪華だから羨んで怒っている訳じゃ無いのは皆さんもお解りだろう。

恐らくあっち(バス)の方が広いだろうし、装備にしてもかなり豪華な物が奢られている筈だ。


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