奉公〜咆哮1番外編〜
 お約束のブスオカマ達三人を除けばなんだ、みんな綺麗だぞ?

ちょっとした高級キャバクラだって、こんなに粒が揃っているのは珍しい。

「ちょっとお兄さん、ちょっと!」

 ママだ。

「そんな真面目な顔でキョロキョロしてたら楽しめないわよ?
 こういうトコ初めて?」

「あ、ああ」

 ママは俺の頭越しに店内へ叫んだ。

「チェリーボーイよ! 誰か喰いに来て! ほらジュリ」

「はぁ〜い、ジュリです。宜しくぅ」

 現れた彼女(彼氏?)のなんと美しい事。白い肌、黒目がちな瞳、筋の通った小さい鼻、細い肩。声も女性のそれとまるで変わらない。

「どお? ウチの子達はみんな若い内からタマタマ抜いちゃってるから、華奢で綺麗でしょ。ジュリちゃんの胸なんか、シリコン入って無いのよ?」

 ママはジュリの大きく胸の開いたドレスから手を差し入れ、いきなり揉みだした。

「あん、駄目よママ」

「ここが一番感じる癖にっ! あ、ここもか」

 ママがうなじにキスすると、ジュリはビクンと身体を捩る。

「でーもっ!」

 ママは振り返りざまに言う。

「お客さんはお触りNGで宜しくネ!」

「そんなぁ……」

 ナニッ? 俺は今なんて言った?

ここに居るのは男だ。この美しいジュリちゃんだって、精巣は無くても竿は残っているという。上半身は女だが、下半身は紛れもなく男なんだ。

そう解っていてもこの劣情はなんだろう。

……も、もしや俺にはその気が有るのか!

辺りを見回すと、ブスオカマ達の軽妙なトークが窺える。他の子達もそれぞれみんな美しかったり可愛かったり、その辺のヘタな女より女性らしい。

ドラマなんかに出てくるオカマバーとは大違いだ。

「た、楽しい」

 思わずボソリと独りごちた俺は、甚だ不遜ながらこの世界にはまってしまっていた。

「さぁ、坂本さん。そろそろ最初のショータイムよ? 私もダンサーで出るから、応援してねっ」

 ジュリはそう耳元で囁くと席を立って行った。


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