奉公〜咆哮1番外編〜
 ただでさえほの暗い店内の照明が一気に落とされ、まばゆいばかりのスポットライトが司会役の子を照らし出す。彼女(彼氏?)は売れっ子モデルの何とかちゃんに瓜二つだ。

教室程の空間が「これから始まる何か」に向けて一瞬張り詰める。

すると迫力の有る野太い声が彼女の口から発せられた。

「ショータイム始めるわよぉ! ソレソレぇぇえ!」

「ゲビちゃん声低過ぎ〜」

 常連からすかさず声が掛かる。

「まぁ失礼しちゃうわっ? 最初はチーム2分の3のコントでぇす」

 2分の1はニューハーフのハーフ、分子の3は三枚目の3だという。ブスオカマ3人とシジミママと若いニューハーフのユニットだ。


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「どうも失礼しやしたぁ〜」

「いいぞ〜」「ヒューヒュー!」

  パチパチパチパチパチパチ

 下手なお笑いグループのネタよりも余程笑える、下ネタ満載のコントだった。

「いやぁ、坂本さん。この『(仮称)通じる君』が有って助かったよ。
 見たままのタイミングで訳して貰えるから、実に楽しい!」

「王子にそう言って頂けると幸いです」

 王子を楽しませる目的以前に、俺がその場を存分に楽しんでいた。


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 その後、お客が舞台に上がってニューハーフ達と触れ合う参加型のイベントが有ったり、煌びやかな衣裳で本格的なダンスを見せる、妖艶なショーが有ったりした。

王子は踊り子達に、万札で作った首飾りや王冠をガンガン与えてやっていた。

俺もジュリちゃんの胸元に一万円を差し込む。

「こんな世界も有るんだ」と、半ば酩酊状態に陥っていた。勿論アルコールは無し、コーラだけでだ。


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