奉公〜咆哮1番外編〜
「里美ぃ! お前も交ざれよ、逡君の話してるんだからさ!」

「なによぉ、まだ疑ってるのぉ?」

 喉を潤す為に梅チューをひとあおりして里美が椅子に座る。

「里美! ボタンボタン!」

 夢中で踊りながら歌っていた為に、ブラウスのボタンが外れてしまっていたのだ。

 違うちがう! リモコンのボタンじゃない!

「栗原もじぃっと見るなっての!」

 俺はヤツの後頭部に、歌本でキツイ突っ込みを入れた。

「ほぇぇ。白いおっきいおっぱいキレェだなぁ……」

 壊れたな、急所に入ったか。

「逡君の話はこっちに置いておくとして、今回の案件は要人警護なんだよ」

「解ります。『里美さんは良く働きなさるのぉ』とか『坂本さんは、それはご立派な人物じゃて』とかっすね?」

「里美は我々が何をするべきだと思う?」

「ほら、老人が使う敬語で『老人敬語』っすよ。ほらほらぁ!」

 ……栗原にはひとりで喋らせておこう。

「俺が知ってる栗原って男は、さっき歌本で葬った」

「すいません。調子に乗ってたんス。許してぇ〜っ」

「具体的にあたし達はどうすればいいのかしら……」

「里美さんに迄シカトされたら俺はどうすればいいのかしらっ!」

 そろそろうるさいから仲間に入れてやるか。

「じゃあ栗原、お前はどうしたらいいと思う?」

「ふぇ〜え゙えん! ぅぇえ゙ぇ〜ぇえん。許してくれて有り難うございますぅ、坂も……どっ、ぐぇっ!」

 今度は里美の手に依って葬られた。

「なに? 栗原、あたしの真似? あたしはそんな泣き声は出しませんっ」

「里美さん、おもいっきり角っすよ? ホラ、脳ミソ出ちゃったじゃないっスかっ!」

「それはお前が頼んだカニ味噌でしょ? 実際お前の脳ミソと大差無いだろうけどっ」

「酷いなぁ里美さん、でも……もっと叱って!」

  バシィッ!

「はぉうっ!」

 里美に抱き付きに行った栗原は、更にキッツイ一発を見舞われていた。しかし栗原の泣き真似、結構いい線突いていたと思うが、ここは黙っておくとしよう。


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