奉公〜咆哮1番外編〜
 話は元に戻して……どのような観光ルートを辿るかにも依るが、里美と栗原でロタリパ王子の両脇を固める。そして俺は一段高い、もしくは広く周囲を見渡せる場所から援護という形に(取り敢えずは)してみた。


∴◇∴◇∴◇∴


「そうして頂けますか? 有難とうございます。色々ご無理を申しましてすみませんでした」

 翌日根岸から音力に呼ばれ、俺は昨日相談した事柄を伝えた。思えば彼とはいつも電話なので、直接話をするのは随分久し振りである。北田が用事で出払っている為に、根岸が自ら『城北ブロック修練所』にやって来ているのだ。

「俺が【陣】(ジン)を失敗して出来た傷、まだ残ってますよ」

 栗原が指を差しながら言う。俺達も『免許皆伝』以降ここに訪れる事は稀なので、この訓練施設に懐かしさを感じていた。

「こちらは狙撃班も含め、20人体勢で遠方監視を行います。
 狙撃隊及び監視隊の隊長は、古内警部補の先輩でもある関口警部が担当しますので、宜しくお願いします」

 周りから20人のバックアップが有るなら安心だ。俺の中で要人警護という任務が少しずつ形になってきた。

「では15人を監視に、4人を狙撃に、隊長を1人の配分にして貰えますか?
 いや、監視は多い方がいいし、狙撃手は2人でもいいかな」

「そうですね、いざとなればライフルなんかより破壊力の有る坂本さん達だ。
 それでは警察は監視を重点的にやればいい訳ですね? 解りました、そのように手配します。
 あ、それと……少し待ってて貰えますか?」

 ブースを急いで出ていった根岸は数分後、よくお婆さんが引いている『ショッピングカート』のような物を転がして戻って来た。

「根岸さん。その後ろに引いているのは何ですか?」

 良く見てみると口の部分には、カーオーディオのようにコマゴマと部品やディスプレイの付いた箱が並んでいて、荷物が入りそうには思えない。

根岸は少し得意そうに、ネクタイの結び目をしごきながら言った。


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