奉公〜咆哮1番外編〜
「今日わざわざこちらに来て戴いたのは他でも有りません、これをお渡しする為だったのです。
 これはラマネリ語と日本語の完全同時通訳機です。仮に『通じる君』とでもしておきましょうか」

 そのまんまだ。

「この機械がこれまた優秀でして……人間の通訳さんよりも遥かに的確な翻訳をします。
 加えて微妙なニュアンス迄文章化出来るので、かなり役に立つと思いますよ?
 でも言っておきますが絶対に壊さないで下さいね? 何しろ昨日、やっと出来上がったばかりなので、フォーマットのバックアップも取っていないのです。
 一から作り直すには莫大なお金が掛かりますから、そのつもりでお願いします」

 喋り長っ! 何だか根岸も北田と似てきたな。


∴◇∴◇∴◇∴


 雲一つ無い日本晴れの空の下、ロタリパ王子のチャーター機が鳴田空港に降り立った。

ドアから顔を覗かせた王子は、お供の従者を5人連れている。1人は美少年だが他の4人は眼鏡に玉ねぎ頭、菱形の口をしたいかにも漫画チックな者達だ。


「ヌシャーラ。ここが日本である。余について来れて良かったな※」

 ロタリパ王子は美少年に向かってそう話し掛ける。ヌシャーラと呼ばれた美少年は、どうやら従者というよりも王子と対等な関係らしく、ちっともへり下った様子が無い。いや寧ろ王子より堂々としている。

王子はかなりふくよかで背も余り大きくないのに対し、その少年はスラッと伸びた四肢を持ち、美しく長い白金色の巻き毛をなびかせ毅然と立っているのだから、余計にそう見えるのだろう。

事前に王子の写真を見ていなかったら、危うくこっち(美少年)にかしずいていたに違いない。

玉ねぎ頭の従者達は、ロール状になった赤絨毯を敷き伸ばしたり、花びらを撒いてまわったり、タラップ下で歓迎のラッパを吹いたり、はたまた「わーい!」と嬌声を上げながら滑走路を走り回ったり、各々の役割を的確に(?)こなしている。


※ 実際はラマネリ語で話しているが、都合上日本語でお届けしている。


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