小さなチワワの大きな秘密

由優は叩かれた頬を触りもせず、横を向いて自嘲気味に笑った。

「…傑作」

瑞穂が有り得ないというように此方を見つめる。


私は由優を相変わらず睨みつけていた。



「何が傑作なの?」

私の口調は固い。

堅い。

硬い。



「君の基本属性は思い上がりにお節介?」

カチン、と来るとはこのことなのだろう。

「何が思い上がりだって言うの!?それはそっちじゃない!」

由優の手から瑞穂の財布を取りあげると、私は瑞穂の鞄にそれをねじこんだ。



「…──っ!私のことで喧嘩しないでよ…」

「瑞穂のせいじゃない!…信じられない…犯罪なんだよ?」

「だってそれは──」

「瑞穂の幸せは私の幸せだよ…とでも言う?思い上がりじゃん」

もう何も言いたくなかった。

「瑞穂、帰ろうよ」

「でも──」

「帰ろ」


私の口調に瑞穂は困りながら頷く。

大して背も高くないのに、見下されて、彼の目も据わっている。

(ムカつく…)



一睨み、そして私は教室から出た。


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