小さなチワワの大きな秘密
三、 ウサギの如く!

事件的何か。



ぱちん、ぱちん。

ホッチキスの軽い遮断音が白い教室に響く。

まだ、誰も居ない教室に。

どうして私がこんな朝早くに学校に来たかと言えば、理由は一つ。

──“文化祭”準備だ。


私は劇に出られない分の労働を劇の紹介パンフレットの作成に回すことにしていた。

(せめてもの、ね)


私がふと窓の外を見上げると、静かな眩しい空がいっぱいに広がっていた。
まるで、私なんかちっぽけな存在だと見透かしているように。

「よし」

息を一つ、吐いて私はまた手元に視線を戻した。

ぱちん、ぱちん。

今日、私は隣の彼と目を合わせられるだろうか。

正直なところ、はっきりとした自信は無かった。

(来なきゃいいけど、なぁ)

目を瞑る。

廊下が段々賑わい出したのを聞き取って、私はまたホッチキスと戦い始めた。


からから。
小さな音と一緒に瑞穂が一人で教室に入ってくる。

「おはよう」

「何で…?早い──…」

「仕事。お節介しに来た訳じゃないよ」

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