小さなチワワの大きな秘密
返事は無い。
(判ってはいたけどなぁ…)
何と無く残念な気持ちを胸に、私は席についた。
そのガタン、という音に彼が反応する。
「────…誰?」
はっきり言おう。
私より可愛かった。
面倒臭そうに、不機嫌に。
男の子にしては高い声で、
女の子みたいな(より可愛いみたいな)顔で
怪訝そうに私を見ていた。
「転入してきた、三崎です」
「フーン」
(…ていうか知っとけよ)
しかも、聞いておいてそれは無いんじゃないかと。
それじゃあまるで私が勝手に喋ったみたいになってしまう。
「君は?」
無視された。
「…君って俺?」
──…わけじゃなかった。
私が頷くと、「あー」と一人で納得する。
(何かもう嫌だよ…)
「──椎名由優」
しいな、ゆう。
「女の子みたいな名前だね」
「…そう思う」
椎名由優は諦めたような顔で窓の外に目を移してしまった。