小さなチワワの大きな秘密
「…ねぇ、椎名君」
由優がふわ、と振り返る。
瑞穂はそれに語り掛けるように口を開いた。
「私…仙石さんと仲良くなりたいなんて思わない。損だろうけどね?」
「フーン?」
「でも、でもね、映依は…友達って呼びたいの」
「…」
由優がこちらに目を向ける。
「全部忘れちゃえば?」
「え?」
「知ってるよ、
全部忘れられる方法」
由優が見下したような笑いを瑞穂に向けて、彼女に向かって手を差し出した。
瑞穂の目から涙が零れる。
「───…」
風が吹いている。
目一杯の空。
瑞穂は静かに手を取った。