小さなチワワの大きな秘密

私は由優を見つめてから、
(やっぱり悪い人なだけじゃない)
と思った。


立ち上がる。



ガラ。


「瑞穂に何する気?」



扉は開けたまま、教師…日向を睨みつける。

日向は笑っていた。

「何って…──邪魔だな」

コツ、コツ。

日向が静かに歩み寄って来る。
私はその分後ろに下がった。

日向の足が止まる。


「由優に襲われたりは?」

「はい?」

してないのか、と何度か独り言のように頷いて、またこちらを向きなおす。

現在、日向との距離5mくらい。

「瑞穂は何処?」

「さぁ?」


「…答えてよ」

「ベッドの上だよ…だから何だって?」


ちら、と廊下を見遣ると、由優は1mmも動いていなかった。

「じゃあ!椎名に何したの!?」

「答える必要が無い」

「勝手に決めないでよ」

日向の口元が歪む。

「威勢の良いことで」


「…」

「ただテスト体になってもらっただけ」


(テスト体?)

「見本、かな」

シャッ。

日向の手がカーテンを引く。


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