小さなチワワの大きな秘密
そこから授業が始まったものの、由優は私など視野にも入っておらず、一言も喋るなどはしなかった。
しかし。
二時間目のことだった。
「───…ねぇ」
なんと由優から私に目も合わせて話し掛けてくれたのだ。
私は数学の教科書を机に立てて「どうかした?」と返した。
若干の期待を込めて。
「…先生呼んで」
(…自分で呼んでよ)
そう思いつつ、転校生の分際で命令に反する訳にもいかず、私は先生を一応呼んだ。
「あの…椎名君が呼んでます」
先生はこちらにやってきた。
「椎名君?先生呼んだ?」
「…保健室行きます」
「一人で行ける?」
「慣れてますから」
そう言ってゆるゆると立ち上がりふらふらと教室から出ていった。
(病弱キャラか)
あの様子では、私の隣に彼が居ることはかなり貴重そうだ。
(さっきの最初で最後の会話だったりして)
と冗談をついて授業に戻ることにした。