小さなチワワの大きな秘密
「三崎映依ちゃん、だったよね?」
「は!はい」
「やだなぁ、固いよー。映依って呼んでいい?私は仙石麻耶って言うんだけど」
私の前に座る子が話し掛けてくれた。
とてもフレンドリーで良い人だと私は思って、嬉しかった。
(何でこの子隣じゃないんだろ)
「でも大変だねー。転校早々椎名の隣なんて」
「やっぱり変な人?」
「そりゃまぁ。でも変っていうか不思議で、格好いいけど可愛くて何ていうか…結構皆の憧れ、だなぁ」
憧れ。
麻耶は照れたように話した。
「そっか…」
「でもいっつも保健室行っちゃうのね?だから喋ったりは…出来ないんだ」
「…へぇ」
「だから椎名の趣味、好きなもの、タイプとか…何も誰も知らないの」
(寂しい人。)
私はふとそう思った。
だって、「知りたい」と思ってくれている人が居るのに、「知ってほしい」と思っているのかもしれないのに、誰も、由優のことを「知らない」なんて。