【完結】─続─泣き虫姫のご主人様





 二人を隔離するコンクリートの壁が、この静寂に更に強さを与える。




「わかるんだよ」





 お互いの声すら、凄みがます程に。



「澪さんに?」


「だってあたしは、そう言った事も、言われた事も両方あるから」





 そう言って、澪は過去を思い出しながら苦笑した。



 嫌いと言ったのは、稚尋に。

 無理矢理キスされて、頭ごなしに怒鳴ってしまったんだ。






 あの時は、ただ怖かっただけ。

 自分をこんなに好いてくれる人に出会った事がなかったから。















 そして、拒絶されたのはあの時。






 瑛梨が、あたしを裏切った時だ。



『呼ばないで。瑛梨の名前』



 あの冷たい氷の瞳は、今も胸に刻まれてる。













 そう。

 どんな人間にも“裏”と
 “表”は存在するのだ。











「――………だからさ。人は誰だって変わっちゃうんだよ? 今、そんな気持ちないかもしれないじゃん」












 あたしは、前に進む。


 昔を糧に。











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