【完結】─続─泣き虫姫のご主人様





 そんな弟の変貌ぶりに兄はただ、驚くことしか出来ずにいた。


「お前……頭打ったの?」




 一瞬、本気で心配になって弥生の額に触れようとしたが、スルリとかわされてしまった。


 それと同時に弥生のさらさらの黒髪が宙に舞った。





「何にもないよ。相変わらず失礼な兄さんだよね? 弟がせっかく改心するって言ってんのに」


 はぁあ……と弥生は露骨に呆れた表情を浮かべた。


 そんな弥生にムカつく半面、呆れる自分がいた。





「勝手にしろ」


 本当は俺だって素直に言えたらどんなに楽になれるだろう。


 言ったらすべてが楽になれることくらい知っていたが、どうしても。


 稚尋のプライドがそれを許しはしなかった。






 悔しそうに唇を噛み締める稚尋を見て、弥生は口角を上げながら口を開いた。






「僕、卒業したら正式にここに住んでもいい?」


 その言葉に青ざめたのは紛れも無く稚尋。


「やめてくれ……!」





 本気で弟の行動を制止しようと思ったのは初めてかもしれない。



 本気で止めに入る兄を見て、弥生は悪戯な笑みを浮かべた。








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