【完結】─続─泣き虫姫のご主人様






「やめてよ、彼氏でもあるまいし……」




 雛子の声が震えていた。



 弥生は気がついていない様に振る舞いながら、更に抱きしめる力を強めた。







「痛いよ、弥生」




 嗚呼。




「ごめん」




 僕は本物の馬鹿だ。















「……これが、聖夜だったら……よかった、の……にっ……」





 彼女には好きな男がいる。



 いくらフラれようとも、簡単に諦めがつく訳がない。









 恋とは、そういうものなのだから。










「好きな人?」




「違うよ。“好きだった”人。もう、フラれちゃったしね」






 胸が痛い。



 彼女の切ない笑顔を見る度に、僕は肺が押し潰されているかのような違和感を感じるのだ。








 呼吸が苦しくて、苦しくて。









「……だったら」








「え?」








 歯止めが利かなくなる。






「僕をその男だと思って、泣けばいい。いいよ。誰もいないから、思いっきり泣いても……」








.
< 230 / 256 >

この作品をシェア

pagetop