タイムリミットはキスするまで




「琴音、残り10秒で出て来なきゃ置いてくから。」




玄関から聞こえる、よく知る声。


カウントダウンを告げ始めたその声に、ショートの髪をとかす櫛を早く動かす。




「よしっ」




鏡に映る自分を見て満足げに頷く。


髪よし。目やになし。制服OK。


あと…




「さーん、にー」




残りのカウントダウンがない事にはっとする。




「ま、…待って!!」




急いで玄関に走っていこうと足を出したが




「…あ。鞄忘れたっ」




踵を返し、自分の部屋に戻り、鞄を肩にかける。


そして、再び玄関へと足を運べば、そこに彼の姿はなかった。



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