月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
しかし淑恵が台所にいる時には起こらない。

「あとは理花の部屋でぬいぐるみが飛んだり、カバンが飛んだり…」

「でも淑恵はそれを見たわけじゃないと?」

淑恵はうなずいた。

「つまりそれってリカちゃんの…」

「確かに、いたずらかもしれない」

そう考えれば説明つく。

「でもね、理花がそんないたずらをする理由が分からないの」

淑恵は右手を頬にあて、深く考えこむような仕草をした。

確かにそうだ。

リカちゃんがポルターガイストの演出をする必要はどこにある?

「そういえば2回ほど火事もあったんだって?」

「あの子、そんな事まで言ったの!?」

「あ、いや…あたしが根掘り葉掘り訊いたのよ」

「麗美って本当ウソつけない性格だよね」

淑恵は一度、大きなため息をついた。

「最初はね、裏庭に置いといた新聞紙が燃えたのよ」

淑恵たちの住むアパートには、猫の額ほどの庭があるそうだ。

そこに置いた新聞紙が燃えたのが今月のはじめ。

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