月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
火を発見したのは一階に住む男性で、ハタチのフリーター。

庭に面した窓辺に座りながらTVを観ていた。

9月の、残暑厳しい昼下がりで、窓は開けっ放しだった。

TVが午後1時を告げた頃、部屋の中に煙が入ってきたのに気付いた。

外を見ると、庭にあった新聞紙が燃えていた。

あわてて昼食のラーメンの丼に水を入れて庭に飛び出し、燃えている新聞紙に水をかけた。

おかげでボヤ程度で済んだが、火災発生当時あたりに火の気はまったくなかった。

「じゃ放火だったの?」

「それがそうとも言えないの」

そのフリーターの男性いわく、庭に人が入ってきたという気配はまったく感じなかったそうだ。

「TVのCMの合間なんかにね、何気なく庭に目をやったりしてたらしいのよ」

「でも不審な人物は見なかったと…」

淑恵はうなずいた。

「その燃えた新聞紙ってあたしが庭に出したやつだったのよ」

< 17 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop