月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
一方、女性の父親も区に相談したが、区役所は助言にとどまった。

もし学校・児童相談所・区役所・警察の間で正確な情報交換が行われていたら、女性はもっと早く母親から「救出」されていたと言われている。

ただしそれにはプライバシーの問題や、個人情報保護の壁が立ちはだかるのだという。

札幌の事件にしても学校関係者は

「個人情報は公的機関に対しても出せない」

と語り、札幌市の幹部職員は

「個人情報保護が厳しく言われすぎて役所内ですら情報交換しづらい」

と語った。

このように、児童虐待の把握には複雑な問題が絡むのだ。

今回のリカちゃんの件で学校側から児相に連絡はない。

あるのは菊村職員個人の懸念だけだ。

「菊村さんの行動は正しいと思います。でも…」

あたしは淑恵からリカちゃんに対する虐待について相談されたわけではなかった。

「自首」などなおさら。

別れ際の態度は気になったが、でもまさかという気持ちの方が大きい。

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