月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
「そうだそうだ!」
「藤森はウソつきだ!」
他の男の子たちもそれに同調した。
「あたしウソなんかついてないもん!」
それまでじっと黙り込んでいた女の子が爆発したように叫んだ。
小学生らしからぬヒステリックな剣幕に、あたしは思わずたじろぐ。
「お前の家にオバケなんかいるワケないだろ!」
は? オバケ?
「いるもん!あたしんチにはオバケいるんだもん!」
女の子は真っ赤な顔をして、男の子たちに負けじと声を張り上げた。
「ウソつけ!」
さっき拳を振り上げた男の子が女の子につかみかかろうとする。
「はいはいストップ~」
あたしは再び子供たちの間に立った。
どうやら状況としては、女の子が自分の家にオバケが出ると言い張り、男の子たちにはそれが気に入らないらしい。
だからといって男の子4人が女の子ひとりを取り囲んでいいという結論にはならない。
あたしは弱い者いじめが大嫌いなのだ。