月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
「それもそうだな」

珍しく達郎があたしの言葉に従った。

降りようとして達郎はお婆さんの方を向き

「どうもご迷惑をおかけしました」

と頭を下げた。

あたしもあわてて達郎にならう。

顔をあげると、湯呑みを置いたお婆さんが笑顔で手招きをしていた。

「?」

顔を見合わせるあたしと達郎。

再びお婆さんを見ると、手招きする反対側の手には、かりんとうの袋があった。

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