月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
「あら、警察の方?」

警察手帳を見せると、女性は目を丸くした。

女性はやはり大家さんだった。

「ずい分お若い大家さんですね」

かりんとうの袋を片手に達郎が言う。

お世辞にしては分かりやすいソレだったが、効果はあったようだ。

「いやですよ刑事さんたら、こんなおばちゃん捕まえて」

大家さんはまんざらでもない笑顔で手を振った。

達郎は刑事ではないが、雰囲気的に黙っておいた(いちいち説明するの面倒だったし)。

女性は見た感じ40歳ぐらいに見えた。

大家さんというには確かに若く見える。

話を聞いてみると、このアパートは昨年亡くなった父親から相続したものだそうだ。

「刑事さん、こないだの火事を調べに来てくださったんですか?」

大家さんの問いかけに、あたしは曖昧な笑みを浮かべた。

今回の件はあたしの管轄ではない。

淑恵とリカちゃんの事が気になって勝手に調べているだけだ。

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