月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
「あの子、それもお化けの仕業だなんて言って…あたしがいくら言っても聞かなくて…」

そして、淑恵の苛立ちはピークに達した。

「あの日、いつものようにお化けが出たっていう理花に、あたしついカッとなって…」

気付いた時にはもう、リカちゃんは床に倒れていたという。

「何度も呼び掛けるうちに意識は戻ったんだけど…」

隣室の菊村が聞いた声はその時の声だろう。

そしてリカちゃんの腕に傷は残り、今回の発作に至った。

「あたしもう、どうしたらいいの…」

固く握った拳に淑恵の涙が落ちる。

「なんであの子はお化けが出るなんて言うの? なんであたしの家に火をつけられるの…?」

あたしは淑恵の手を固く握りしめた。

できたことはそれだけだった。

言葉をかけることは出来なかった。

淑恵の「なぜ?」に答えられなかったからだ。

あたしはすがるようにして達郎を見た。

ここに連れてきたことを後悔しときながら結局は頼ってしまう。

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