月と太陽の事件簿9/すれちがいの愛情
「理花ちゃんの退院が決まって良かったな」

待ち合わせ場所にやってきた達郎は開口一番そう言った。

リカちゃんの入院が思ったより長引いたからだった。

「淑恵さんはどうしてる?」

「最初はふさぎこんでたけど、今はだいぶ落ち着いたわ」

淑恵は病院や学校、児童相談所にすべてを打ち明けた。

どの関係機関でも寛大な処置がとられたのは幸いだった。

「隣部屋の児相所員が、親身になって相談に乗ってくれたんだってな」

あたしはうなずいた。

菊村さん(さすがにもう敬称をつける)の存在は確かに大きかった。

今では淑恵も心を開いてるみたいだし、リカちゃんもだいぶなついてる。

リカちゃんの体調面には不安はあるけど、3人で上手くやっていくだろう。

「あ、そうだ」

あたしは先日、科学捜査研究所から来た報告書を取り出した。

「出火原因は達郎の言う通りだったわ」

あたしは実験結果を読み上げた。

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